現在、日本において外国人が農業で働くことができる在留資格(ビザ)はおもに以下の4種類(4類型)があります。
※在留資格とは:外国人が日本に在留する間、一定の活動ができること、または、一定の身分や地位を有する者としての行動を行うことができることを示す「入管法上の法的な資格」のことです。
在留資格 | 概要 |
特定技能1号 | 2019年4月から始まった新しい在留資格で、中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するための資格です。 人材を確保することが難しい産業上の分野を特定産業分野(12分野)と位置づけ、当該分野において一定の専門性・技能を持っている外国人が就労できるようにする資格です。 農業分野は、特定産業分野の1つとして認められ、特定技能1号の在留資格を 有する外国人は、農業の指定された仕事に就くことができます。 |
技能実習 | 外国人が技能実習生として、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において習得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。 期間は最長5年とされ、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。 |
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者 | 身分・地位に基づく在留資格で、活動の制限がなく、農業に従事することもできます。 |
資格外活動許可 | 就労や留学等の在留資格で在留する外国人の方が、許可された在留資格に応じた活動以外に、アルバイトなど、収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行おうとする場合に必要な許可です。 なお、1週について28時間以内で報酬を受ける活動の申請をした場合で、資格外活動許可の「一般原則」に適合する場合に、包括許可として認められます(ホームページ内「資格外活動許可」を参照)。 ただし、包括許可は就労時間が確定できる内容の就労でなければなりません。 |
ここでは、上記4つの在留資格の中でも人手不足解消のため制度化された「特定技能」について、「農業で外国人を雇用するための要件」や「農業分野で特定技能外国人を雇用する流れ」等について説明していきます。
農業分野での特定技能外国人を雇用する条件 その他
外国人が特定技能外国人として受け入れられるための要件は、主に下記となります。
人材の基準
①外国人の年齢が18歳以上、健康状態が良好であること
②「技能試験」及び「日本語能力試験」に合格していること(※技能実習2号合格者は免除)
「技能試験」について
- 農業技能測定試験~2種類 ①耕種農業全般 ②畜産農業全般
- 実施主体 一般社団法人全国農業会議所
- 試験の実施概要~(一社)全国農業会議所のHP(http://asat-nca.jp/)に掲載あり
※http://asat-nca.jp/ このHP内には農業特定技能外国人を求人する事業所と試験合格者をマッチングする機能も備えています。
「日本語能力試験」について
- 実施主体 下記の2種類あり
①日本語能力試験(N4以上で合格)
実施主体は(公益財団法人)日本語国際教育支援協会、(独立行政法人)国際交流基金、試験の実施概要~ http://info.jees-jlpt.jp/ にて公表しています
②国際交流基金日本語基礎テスト
実施主体は(独立行政法人)国際交流基金試験の実施概要~ https://www.jpf.go.jp/jft-basic/ にて公表しています
受入機関等の条件
①「農業特定技能協議会」に参加し、必要な協力を行うこと
②過去5年以内に同一の労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験がある事等
その他
ア.農業分野において特定技能外国人が携わることができる業務
①耕種農業全般(栽培管理、集出荷・選別等 ※栽培管理の業務が含まれている必要がある)
②畜産農業全般(飼養管理、集出荷・選別等 ※飼養管理の業務が含まれている必要がある)
※日本人が通常勤務している関連業務(農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業等)に付随的に従事することも可能
イ.雇用形態は以下の2種類がある
①直接雇用
②労働者派遣(派遣業者は、農協・農協出資法人・特区事業を実施している事業者を想定)
(※)
受け入れる人材と手続き方法
外国人材の受け入れについて下記A.からE.について説明します。
A.受け入れる人材を探すには、どうしたらいいのか。
B.受け入れたい外国人が決まったら、どうしたらいいのか。
C.外国人材をどのような形で受け入れることができるのか。
D.外国人材は、何年間働くことができるのか。
E.外国人材は、どんな作業に従事できるのか。
A.「受け入れる人材を探すには、どうしたらいいのか。」について
以下の①、②のようにすでに受け入れたい外国人材が決まっている場合
①自分が現在受入中の技能実習生を引き続き特定技能外国人として受け入れたい
②以前自分が受け入れ、現在は帰国している技能実習生OBをもう一度、特定技能外国人として受け入れたい
受け入れる外国人を一から探す場合
以下の①、②へ希望に沿う外国人を探したい旨、相談する。又は③に登録する
①農業分野での技能実習生の受け入れ実績を持つ最寄りの農協
②最寄りのハローワークや民間の職業紹介所
③「農業技能測定試験合格者向け求人情報提供サイト(https://asat-nca.jp/job/login/)」へ登録する
※③について~
このwebサイトで、農業分野の在留資格「特定技能1号」を取得するために必要な農業技能測定試験に合格した外国人材に、農業者の求人情報が提供されます。
試験合格者は個別にwebサイトの案内がされているので、細かい求人情報が確認できることになります。
ただし、このサイトで情報が提供される外国人は技能試験に合格しておりますが、日本語試験に合格しているとは限りませんので、日本語試験の合格については別途確認が必要です。
B.「受け入れたい外国人が決まったら、どうしたらいいのか。」について
C.「外国人材をどのような形で受け入れることができるのか。」について
特定技能制度による農業分野での受け入れ方法は、下記の3つのパターンがあります。
①農業事業者が受け入れ機関として直接、外国人を雇用する
②派遣事業者が受け入れ機関となり、外国人材を農業事業者へ派遣する
(※特定産業分野の中で、派遣雇用ができるのは「農業」と「漁業」の2分野のみです)
③JA等が外国人材を雇用したうえで、組合員等の農業者から農作業等の業務を請け負い、外国人材にその業務に従事してもらう
D.「外国人材は、何年間働くことができるのか。」について
特定技能制度では、外国人が日本で働ける期間は「通算で5年」までとなります。
下記の①または②のどちらでも可能です。
①5年間継続して働いてもらう
②農閑期には帰国し、農繁期に働き、働いた期間が通算で5年になるまで働いてもらう
E.「外国人材は、どんな作業に従事できるのか。」について
外国人材は主として、下記①、②の作業に従事することが可能です。
①耕種農業全般の作業(栽培管理、農産物の集出荷、選別等)
②畜産農業全般の作業(飼養管理、畜産物の集出荷、選別等)
ただし、その業務内容には、栽培管理または飼養管理の業務が必ず含まれていることが必要です。
(例.農産物の選別の業務にのみ従事させるといったことはできません。)
また、同じ農業者等の下で作業する日本人が普段から従事している関連業務(加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業など)にも付随的に従事することが可能です。
特定技能での雇用契約の内容
特定技能外国人を雇う場合に、どのような内容の雇用契約を結べばよいでしょうか。
業務内容、労働時間、賃金などの労働条件について基準を満たす内容(下記①から⑥)であること、が必要です。
①従事すべき業務内容~耕種農業全般または畜産農業全般に主として従事する内容であること
②労働時間~外国人材の所定労働時間について、農業者等に現に雇用されている他の労働者の所定労働時間と同じ内容が規定されていること
③休暇~外国人材が一時帰国を希望した場合、必要な有給休暇を取得させる旨の規定があること
④賃金~特定技能外国人の賃金が、外国人を雇用する農業者の下で、同じ作業に従事する日本人労働者と同じ金額以上であること
⑤健康状態等の把握~健康状態その他の生活状況を把握するのに必要な措置を講じる旨を規定すること
⑥帰国費用の負担~雇用契約終了後の帰国費用を外国人が負担できない場合、旅費を負担するとともに、外国人材がスムーズに出国できるように必要な措置を講じる旨を規定すること
さらに、下記の2つの内容について「基準を満たしている」ことを成約した「誓約書」を作成し、入管での申請の際に他の書類と併せて提出しなければなりません。
- 過去5年以内に労働者を6か月以上雇用した経験がある事
- 「農業特定技能協議会」に入会し、協議会に必要な協力を行うこと
(※誓約書~分野参考様式11-1号)
特定技能制度での「支援計画」とは
受け入れ機関は、1号特定技能外国人に対して「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画を作成し、当該計画に基づき支援を行わなければなりません。
そしてこの支援計画は、在留資格の諸申請(特定技能1号に関する在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請等)をする際に、事前に支援計画を作成して、申請時に他の書類と併せて提出しなければなりません。
なお、受け入れ機関は、支援計画の全部または一部の実施を他の者(登録支援機関)に委託することができます。
「支援計画」の主な記載事項と策定する内容
「支援計画」の主な記載事項は、以下の3つの項目です。
A.職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援として必要、として省令で定められた10項目(下記に記載)の実施内容・方法等
B.支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職等
C.支援の実施を契約により他の者(登録支援機関)に委託する場合の当該他の者の氏名および住所等
A.にある、支援計画で策定するべき10項目です。
1.事前ガイダンス
2.出入国する際の送迎
3.住居確保・生活に必要な契約支援
4.生活オリエンテーション
5.公的手続への同行
6.日本語学習の機会の提供
7.相談・苦情への対応
8.日本人との交流促進
9.転職支援(人員整理等の場合)
10.定期的な面談・行政機関への通報
これらの支援計画は、受け入れ機関が主導で作成しなければなりません。
「農業特定技能協議会」とは何か
初めて1号特定技能外国人を受け入れる農業者は、地方出入国在留管理庁への在留資格認定証明書交付申請(または在留資格変更許可申請)を行う際に、「1号特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に協議会の構成員となる」旨の誓約書を提出しなければなりません。
「農業特定技能協議会」はどんなことをするのか
1.農業特定技能協議会は、特定技能制度の農業分野での適切な運用を図るために設けられました。
2.農業者が外国人材の受入機関となった場合は、農業特定技能協議会に加入することで、今後、協議会が行うこととしている以下の活動を通じ、外国人材の受け入れをより適正かつ円滑なものとすることが可能となります。
① 協議会が依頼する各種アンケートや現地調査へのご協力
② 外国人材の受入れに役立つ各種最新情報の共有
③ 個別の受入れで生じた課題の共有とその解決に向けた構成員間の協議
3.最初に外国人材を受け入れた場合は、受け入れ後4か月以内に協議会に入会が必要です。
4.加入については、農林水産省HPの加入フォームから申請ができます。
http://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/new.html
5. 申請された情報に問題がなければ「加入通知書」が送付されます。これで、加入手続きが完了です。
受け入れ後の必要な報告及び届出
外国人を受け入れた場合、雇用契約や支援計画に関する各種届出が義務付けられており、届出をしなかったり、虚偽の届出を行った場合は、罰則の対象となります。
それぞれの事由が生じた日から14日以内に忘れずにご提出ください。
届出の種類 | 届出のタイミング | 届出の主な内容 |
雇用契約に関する届出 | 雇用契約の内容に変更があった時 | 変更、終了、新たな契約の締結時の内容等 |
支援計画に関する届出 | 支援計画を変更したとき | 計画変更時の内容等 |
登録支援機関との委託契約に関する届出 | 登録支援機関との契約締結、契約変更、契約終了する時 | 契約時や契約変更時の内容等 |
外国人材の受入れが困難になった際の届出 | 受け入れが困難となった時 | 困難となった事由、外国人材の現状、活動継続のための内容等 |
不正行為を知った時の届出 | 不正行為の発生を受入機関が知った時 | 発生時期、認知した時期、当該行為の内容とそれに対する対応等 |
外国人材の受入れ状況に関する届出 | 4半期ごと | 外国人材の総数、外国人材の氏名、国籍等の情報、業務内容(派遣形態の場合は派遣先の情報) |
支援計画の実施状況に関する届出 | 4半期ごと | 各種支援の状況(定期面談実施時の内容、対応結果等) |
外国人材の活動状況に関する届出 | 4半期ごと | 報酬の支払い状況、従業員数、各種公的保険に係る適用状況等 |
農業分野 特定技能外国人雇用のまとめ
農業分野では多くの外国人が技能実習生として日本の農家で従事しておりますが、技能実習制度の実績や反省をもとに色々と工夫がなされたのが特定技能制度です。
とくに、農業分野では派遣雇用も認められ、農繁期に雇い、農閑期に本国へ帰す、というような雇用の上で柔軟なやり方が可能となっております。
また、技能実習のような人数制限もなく、特定技能では希望人数を確保できる内容となっております。
そして、関連業務に付随的に従事できるなど、農家にとっては現状の問題点に対応しやすい内容となっております。
ただし、外国人をきめ細かくサポートするために、手厚い支援計画が必要であること、提出書類、届出書も多く、運営上は手がかかり、習熟するにはハードルが高い内容となっております。
ご不明点等があれば、是非当事務所まで、お問い合わせください。