国籍の留保・国籍の選択とは

国籍に関する記事を見ているとよく「国籍の留保」という言葉が登場します。

実際にどのような状況で使われる言葉でしょうか。

また日本では、2重国籍を認めておりませんが、なぜ1つの国籍しか認めないのでしょうか。

国籍の留保とは

外国で生まれた日本人の子で、出生によって日本国籍と外国国籍を両方取得した場合、出生日から3か月以内に日本国籍を留保する(権利を保持すること)意思表示をしなければ、その出生の時にさかのぼって日本国籍を失うこととされています。

留保の意思表示は、外国にある日本の大使館・領事館または市区町村役場に出生届を出す場合に、その出生届に「日本国籍を留保する」と記載がされた部分があり、そこに署名をすることでなされます。

この3か月という期限に1日でも遅れると、生まれた子に日本国籍が与えられません。

親の戸籍にも載らないことになります。せっかく生んだ子が、まるで存在していなかったようになってしまいます。

親が法律を知らなかったために、生まれてきた子が日本国籍もなく、戸籍にも載らないままになってしまった、という悲劇もあるようです。ほんとに、気を付けなければなりません。

なお、日本国籍の留保をしなかったことにより日本国籍を失った方については、18歳未満であって日本に住所を有する時は、法務大臣に届け出ることによって、日本国籍を再取得することができます(「届出」による再取得)。

国籍の選択について

知らない方も多いと思いますが、日本の国籍法には「国籍の選択」制度(国籍法第14条から16条まで)というものがあります。

これは「出生や婚姻、養子縁組、認知などにより外国及び日本の国籍を持つことになった日本人は、それが18歳前であれば22歳に達するまでに、18歳以降であればその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない」というものです。

国籍を選択する必要があるのは、重国籍者が2つ以上の国家に所属することから、

①それぞれの国の外交保護権が衝突することにより国際的摩擦が生じる恐れがある
②それぞれの国いおいて別人として登録されるため、各国において別人と婚姻するなど、身分関係に混乱が生じる

などのためだそうです。

そして、国籍法ではこの期間に選択届を出さない場合、法務大臣が書面又は官報により、国籍の選択をすべきことを催告することができるとされており、催告を受けた日から1月以内に日本国籍を選択しなければ、その期間が経過したときに日本の国籍を失う、ことになります。

ただし、国籍選択の催告は法務大臣から出されたことは殆どなく、催告の制度によって日本国籍を失った人はほとんどいないようです。