日本で「技術・人文知識・国際業務」ビザを有する外国人は、日本に10年以上生活し安定した生活を送るようになった場合、「永住者」ビザを取得したいと考える方が多いと思います。
「永住者」ビザのメリット
「永住者」になることで次のようなメリットがあります。
■在留期限がなくなり在留資格の更新が不要になる
(7年ごとの在留カードの更新は必要です)。
■就労ビザと違い、転職が自由にでき、失業しても在留資格がなくならない。
■社会的信用が上がり、銀行の借入・住居を借りる時の交渉がしやすくなる。
■就労ビザと違い、働く時の職種の制限がなく、起業することもできる。
■これから生まれる子供の永住申請ができる(収入の要件有り)。
「永住者」ビザの許可の要件については、当ホームページの「永住者」ビザでも説明しておりますが、下記のようになります。
「永住者」ビザの要件
「永住者」ビザの許可要件は、下記の3つの条件をすべて満たすことが必要です。
① 素行が善良であること(素行善良要件)
② 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益要件)
なお、どの在留資格から「永住者」ビザを申請するかにより、申請時の提出書類が変わってきます。
現在どの在留資格(下記)から申請するかについては、以下の4種類のパターンがあります。
A. 申請人が、日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者のいずれかである場合
申請人が、日本人の実子、永住者の実子、特別永住者の実子のいずれかである場合
B. 申請人が、「定住者」の在留資格である場合
C. 申請人が、就労資格(「技術・人文知識・国際業務」、「技能」など)及び「家族滞在」の
在留資格である場合
D. 申請人が、「高度人材外国人」であるとして永住許可申請を行う場合
※所得及び納税状況についての提出資料で、「過去3年分」の場合と「過去5年分」場合があり、この部分に提出資料の大きな違いがあります。
なお、上記の A. B. D. については「永住許可についてのガイドライン 2.原則10年在留に関する特例」にて、本邦に在留する年数要件が緩和されています。
次に、永住者ビザの要件①から要件③について説明します。
要件① 素行善良要件について
素行善良要件として、法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること、とされています。
具体的に下記の場合、「素行善良要件」に反することとなります。
● 自動車を運転し、スピード違反や駐車違反などの交通違反を繰り返している。
● 法律違反による罰金刑や懲役刑を受けていたことがある。
● 過去にオーバーステイなど、入管法に違反した。
要件② 独立生計要件について
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること、とされています。
申請人の収入の目安として、独身者であれば直近3年(または5年※)連続で300万円以上であることが最低限必要です。
ただし、扶養者がいる場合は扶養者1名につきおよそ70万円程度の上乗せが必要です。
この場合、扶養者に収入があれば、その収入を含めた世帯収入を示すことも可能です。
※A. D. の場合は直近3年分、B. C. の場合は直近5年分の「所得及び納税状況を証明する資料」の提出が必要です。
要件③ 国益要件について
日本での以下の居住状況などが審査のポイントとなります。
● 引き続き10年以上本邦に在留していること
● 10年の在留期間のうち就労資格(「技能実習」「特定技能1号」を除く)または居住資格を
もって5年以上在留していること
● 罰金刑や懲役刑を受けていないこと。
● 公的義務(納税、年金・健康保険納付)を適正に履行していること。
● 現に有する在留カードで在留期間が3年以上であること。
※A. B. D. の在留資格の場合は、「③ 国益要件」の中で必要とされる年数が緩和されることになります。
「技術・人文知識・国際業務」から「永住者」への変更申請と注意点
外国人がどの在留資格を有するかにより、「永住者」取得の要件が変わりますが、ここでは外国人が「技術・人文知識・国際業務」ビザを有している場合について、説明します。
まず、申請者が「永住者ビザ」取得のための要件①から要件③までを、すべて満たしているかどうか確認します。この結果、次の3通りに分かれます。
パターン⑴:要件をすべて満たしている
パターン⑵:要件をある程度満たしているが、一部分不安な部分がある
パターン⑶:要件を満たしていない
その結果、申請を以下のように行います。
パターン⑴について ⇒ 必要な書類をそろえて申請する。
パターン⑵について ⇒ 不安な部分について「止む負えない事情」などがある場合に、その事情を説明する疎明資料を添えて申請する(入管へ事前に問い合わせを行い、許可の見込みを確認することも必要)。
※結果として不許可の場合は、不許可理由を入管に確認し、要件を満たした上で再度申請する。
パターン⑶について ⇒ 要件を満たすようになるまで、待ってから申請を行う。 ※例えば、年金は「申請前2年間ですべて納付」が必要。
そのため、2年間遅れなく納付した状態まで待ってから、申請します。
収入面においても5年間の間、すべて年収300万を超えてから申請する。
「永住者」への変更申請 配偶者がいる場合の注意点
申請者が「技術・人文知識・国際業務」ビザを有していて、配偶者が「家族滞在」ビザの場合、注意が必要です。
申請者が単独申請し、「永住者」ビザの許可を得た場合、配偶者は「家族滞在」ビザの資格を失ってしまいます。
「家族滞在」ビザは、就労系資格を持つ本体者に付随して取得できるビザです。
そのため、本体者が「永住者」ビザという、身分系の資格となった場合、配偶者は「永住者の配偶者等」というビザに変更が必要となります。
「永住者の配偶者等」は、在留期限が「5年」「3年」「1年」又は「6月」となり、更新が必要なビザです。
配偶者が「永住者」ビザを取得するためには、改めて「永住者」ビザの要件を備えたうえで申請しなければなりません。
そのため、「永住者」への変更申請をする場合、できるだけ家族同時に申請することを勧めます。
まとめ
「永住者」ビザは、活動の制限がなく、かつ、在留期間の制限もないため、他の在留資格と比べ大幅に利便性の高い内容となっております。
入管での審査も提出しなければならない資料が多く、慎重に行われます。
標準処理期間は4か月、と入管のホームページで公表されておりますが、現実にはその倍くらいの時間がかかっているようです。
「永住者」ビザへの変更のタイミングですが、入管のHPでは以下のように記載されております。
「変更を希望する者にあっては在留期間の満了する日以前(なお、永住許可申請中に在留期間が経過する場合は、在留期間の満了する日までに別途在留期間更新許可申請をすることが必要です。)」
このように、現に有する在留資格の在留期間に関係なく、任意の時期に申請することが可能です。
ただし、100%許可が下りるわけではないので、現に有する在留資格の期限がある場合は、更新申請をしておかなければなりませんので、この点もご注意ください。