専門学校の外国人を4月入社で採用する手順

日本の専門学校に通う留学生を4月に入社させるためには、どのようなスケジュールで、どのような手順が必要でしょうか。ここでは、その点について具体的に説明してまいります。

 

外国人を4月入社で採用するためのスケジュール

最近は社員の採用に関して、通年で中途採用する企業が増えましたが、ここでは3月に専門学校を卒業する外国人(「留学」ビザを有する)を4月に入社させる場合のスケジュールについて、考えていきます。

「留学」ビザから就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更をする場合です。)

目標:4月1日に入社させること

必要な条件:遅くても3月下旬までに外国人が「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得する事

「技術・人文知識・国際業務」の申請時期:在留資格の更新は「在留期限の3か月前から申請可能」ですが、この時期は新入社員の申請が多いため、4月入社の外国人の場合、前年の12月1日から申請ができます。

前年の12月中に「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更申請を行う。

前年の11月中に変更申請するための書類を準備する

前年の10月までに4月に採用する外国人に対して内定を出し、雇用契約を交わす。

採用面接:6月から8月頃、「技術・人文知識・国際業務」ビザの業務に該当する「外国人に行わせる業務」を明確にして、当該業務と直接関連する科目を専攻した外国人を採用するための面接を実施する。

以上、目標を達成するために逆算してきましたが、順番としては次のようになります。

専門学校の外国人を4月入社で採用する手順

① 外国人の採用面接を実施する<春から夏にかけて>

② 4月に採用する外国人と雇用契約を取り交わす<10月まで>

③ 「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更申請のための書類を準備する <11月中>

④ 在留資格の変更申請を行う<12月>

⑤ 3月末までに「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得させる

⑥ 4月1日付で入社させる

 

次にもっとも準備が必要な①から④について補足説明を致します。

① 外国人の採用面接を実施する

まずは、外国人を「技術・人文知識・国際業務」ビザで採用するためには、「これから外国人が行う業務」が「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動内容に該当しなければなりません。

 

「技術・人文知識・国際業務」ビザの活動内容とは

「技術・人文知識・国際業務」の活動内容に該当する業務とは、下記の業務です。

① 自然科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務(理科系分野

② 人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務(文系分野

③ 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務(国際業務

いずれも単純な作業を行う業務ではなく、専門的な技術又は知識、あるいは思考又は感受性を必要とするもので、かつ、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務が在留期間中の全体の業務の中で主要なものでなければなりません。

主要でない場合は、該当性がないものとみなされ許可が下りません。

 

外国人が「技術・人文知識・国際業務」ビザ取得に必要な学歴等の要件

「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、取得要件として外国人の「学歴または職歴」に必要な要件を設けているため、面接においてその外国人が必要な「学歴または職歴」要件を満たしているかどうか、確認が必要です。この「学歴または職歴」の要件は、業務内容が「理科系・文系の分野」の場合と「国際業務」の場合とで異なります。

 

「理科系・文系の分野」での「学歴または職歴」要件

面接する外国人が「理科系・文系の分野」の技術又は知識が必要な業務に従事する場合、従事しようとする業務について次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を習得していること。

ただし、申請人が情報処理に関する業務に従事する場合で、法務大臣が定める試験に合格している場合、または、法務大臣が定める資格を有する場合については、この要件を適用しない。

●日本で行おうとする業務に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと。

●日本で行おうとする業務に関連する科目を専攻して、日本の専門学校の専門課程を修了したこと。

●10年以上の実務経験を有すること(この年数には、大学、高等学校、高等専門学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間を含む)。

(※専修学校と専門学校の違い~専修学校には、中学卒業者を対象の「高等課程」、高校卒業者を対象とする「専門課程」、入学資格の制限のない「一般課程」の3種類の課程があり、この専修学校のうち「専門課程」を持つ専修学校だけが専門学校と称することができます。「高等課程」や「一般課程」を設けている場合でも「〇〇専門学校」と称しているのが、一般的です。)

 

「国際業務」での「学歴または職歴」等の要件

面接する外国人が「国際業務」(外国の文化的思考又は感受性を必要とする業務)に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。

●翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。

●従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。

ただし、大学を卒業したものが翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合はこの要件は適用しない。

 

「学歴または職歴」に関する補足事項

上記の「学歴または職歴」要件については概略説明のため、補足事項として下記を追加します。

◆外国の高校や外国の専門学校を卒業の場合、「技術・人文知識・国際業務」ビザは取得できません。

◆日本又は外国で短大を卒業して学位を取得している場合は、学歴要件を満たします。

◆日本において、専修学校の専門課程の教育を受けた場合、「専門士」または「高度専門士」の称号を付与されることが要件となります。

「専門士」「高等専門士」とは~専門学校(専門課程)の)修業年限は1年~4年ですが、2年制が一番多くなっています。条件を満たした専門学校において、「修業年限2年以上」「総授業時数1700時間以上」「試験等の結果に基づき課程修了の認定がされたこと」を満たすと専門士の称号が、「修業年限4年以上」「総授業時数が3400時間以上」「期間を通して体系的な教育課程を編成されていたこと」「試験等の結果に基づき課程修了の認定がされたこと」を満たすと高等専門士の称号が付与されます。

◆大学や日本の専門学校での成績証明書(履修科目記載のもの)を受け取り、履修科目と今後の業務内容との関連性をチェックしましょう。

◆日本の専門学校を卒業する場合、大学を卒業する場合よりも業務と専攻科目との関連性が厳格に要求されます(専攻科目と業務内容の一致)。

 

② 4月に採用する外国人と雇用契約を取り交わす

雇用契約を交わす場合の注意点は、報酬の金額です。

外国人を採用する場合、報酬金額の目安は「同じ業務に従事する日本人と同等額以上の報酬」となります。

今回は、4月に入社する新人社員を想定しておりますので、同年齢の同じ業務に携わる場合の報酬が目安となります。同年代の同じ業務に携わる日本人の例がない場合は、当該職種で他社の例を参考にした金額が目安となります。

なお、外国人との雇用契約は、言うまでもなく適法でなければなりません。

 

③ 「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更申請のための書類を準備する

外国人を採用する機関の規模または業態等により、機関は4分類(カテゴリー1.から 4.まで)に分けられ、そのカテゴリーにより、提出すべき書類が変わってきます。例えば「カテゴリー3」(主に中小企業)に該当する機関の場合、提出書類は以下の内容となります。

  • 在留資格変更許可申請書 1通
  • 写真 一葉
  • パスポート及び在留カード 提示
  • カテゴリー から カテゴリー3.に該当することを証明するための文書
  • 申請人の学歴及び職歴その他経歴を証明する文書(履歴書)
  • 労働条件通知書(雇用契約書)
  • 専門学校を卒業見込であることの証明書(卒業後に、卒業証書の原本提示が必要)
  • 専門学校の出席証明書 1通
  • 専門学校の成績証明書 1通
  • 登記事項証明書
  • 直近の決算書写し
  • 雇用理由書
  • 通知書はがき

また、変更申請書を申請できるのは以下の人です。

・申請人本人

・外国人を雇用する機関の職員

・申請者(18歳未満の場合)の法定代理人

・地方出入国在留管理局長に届け出た行政書士または弁護士

 

④ 在留資格の変更申請を行う

在留資格変更許可申請は通常在留期限の3か月前から申請できますが、4月入社の「留学」から就労資格へ変更手続きをする場合は、前年の12月1日から申請が可能となります。

12月から翌年の5月にかけては入管も混雑するため、早めに申請することが大事です。ただし、許可通知のはがきを受け取っても在留カードをもらえるわけではありません。在留カードは、3月に留学生が専門学校を卒業し、卒業証書を入管に提示した後に受け取ることができます。在留カードを受け取るまでは、働くことができません。ご注意ください。

 

以上、「4月入社のためのスケジュール」、「外国人が行おうとする業務の技術・人文知識・国際業務ビザに対する該当性が必要であること」及び「採用しようとする外国人の学歴・経歴要件」について、説明してきました。

 

このほか、「技術・人文知識・国際業務」ビザを申請した場合、受入企業について審査が行われます。

受入企業についての許可要件は、次のようになります。

 

「技術・人文知識・国際業務」ビザ 受け入れ企業の要件

専門学校を卒業する外国人が、4月の入社にあたり「技術・人文知識・国際業務」ビザに変更する場合、受入企業は次の要件を満たすことが必要です。

  • 機関(企業)の業績に問題がないこと。
  • 外国人が行おうとする業務に安定性・継続性があり、当該業務を外国人に行わせる必要性があること。

機関(企業)の業績に問題がないこと

「技術・人文知識・国際業務」ビザの審査では、受入機関(企業)も審査を受けます。

外国人を継続的に受け入れていく、経済的基盤があるかどうか審査され、直近の決算が赤字の場合は、前期・前々期の状況確認や、今後の事業計画書の提出を求められます。

外国人が要件を満たしても、機関の経済的状況によっては、許可が得られない場合もあります。

 

まとめ

以上、4月入社を目指す専門学校を卒業する外国人が、どのようなスケジュールで、何を準備すればよいか、説明してきました。ただし、この説明も許可を得るための大枠を説明したにすぎません。それぞれの要件には、細かいガイドラインなどがあり、慣れていない方が初めから十分な書面を作成するのはなかなか大変なことです。細部についての不明点等ございましたら、是非お問い合わせください。