在留資格「永住者」については、このホームページ内メニュー「永住者」の中でその要件について概要を説明しておりますが、ここではさらに外国人の有する在留資格別の取得要件について解説していきます。
まず、永住許可については「永住許可に関するガイドライン」が令和元年5月31日に改定版として定められましたが、さらに令和5年12月1日付で改訂版が発表されました。この改訂版では、高度専門職についての記載内容が若干変更され、特別高度人材に該当する者が追加されました。ここでは、新しい改訂版に基づき説明を致します。
在留資格「永住者」 法律上の要件
「永住者」の許可については、出入国管理及び難民認定法 第22条1項から4項にかけて定められており、その者が下記の①、➁に適合しかつ「その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り(国益要件)、法務大臣は許可することができる」とされております。
① 素行が善良であること(素行善良要件)
➁ 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
かつ
➂ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益要件)
このように、「永住者」ビザの許可にあたっては、申請する外国人が上記3つの要件を満たしていることを証明する事が必要となります。
3つの要件:素行善良要件、独立生計要件、国益要件、
素行善良要件について
素行については、外国人がどの在留資格を有するかに関わらず、善良であることが許可の前提となります。具体的には、過去に下記のような行為があった場合「善良でない」と判断されます。
・退去強制処分に準ずるような刑事処分を受けた行為
・不法就労を斡旋するなどの行為
・過去に交通違反を繰り返したり、免許取り消し処分や免許停止処分を受けている場合など。
独立生計要件について
生計要件としては、「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」にあるように、申請人はその生活状況として「日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」が求められます。
独立生計要件は、法第22条では「日本人・永住許可を受けている者・特別永住者の配偶者又は子である場合」には独立生計要件に適合することを要しない、とあります。
しかし、当該申請者についても申請書類として「直近(過去3年分)の申請者および申請人を扶養する方の所得及び納税状況を証明する資料」の提出が必要です。
また、申請人が「就労ビザ」「定住者ビザ」を有する場合は「過去5年分の申請人および申請人を扶養する方の所得及び納税状況を証明する資料」の提出が必要となります。
具体的な収入金額の目安としては、年間の収入が最低300万円は必要となります。例えば、就労ビザであれば、5年間にわたり毎年300万円以上をクリアしていることが求められます。なお、扶養者がいる場合は300万円にプラスして、扶養者1人当たりおよそ70万~80万円の上乗せが求められます。
なお、申請者が身分系在留資格(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等など)の場合は、配偶者の収入も加えた世帯収入で判断されます。就労系の在留資格の場合は、本人の収入だけで判断されることになります。
注意点
■申請人のビザの種類により、収入・納税状況の提出資料が「過去3年分」と「過去5年分」の場合がある。
■申請人のビザの種類により、本人単独の収入で判断される場合、世帯収入で判断される場合がある。
国益要件について
国益要件として、下記の7つの要件が求められます。
① 引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち就労資格または居住
資格を持って引き続き5年以上在留していること(本邦在留要件)。
➁ 罰金刑や懲役刑を受けていないこと。
➂ 公的義務(納税、公的年金および公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民
認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
➃ 現に有している在留資格において規定されている最長の在留期間を持って在留しているこ
と。
※当面、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」も
のとして取り扱われる。
⑤ 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと。
※法定伝染病や麻薬・覚醒剤等の中毒患者でないこと。
⑥ 著しく公益を害する行為をする恐れがない、と認められること。
⑦ 公共の負担となっていないこと。
ただし、①の本邦在留要件については、申請者の有する在留資格によって特例が適用されます(要件が緩和される)。以下の表にまとめました。
在留資格別の本邦在留要件一覧
申請人 |
国益要件のうち本邦在留要件 |
|
原則 | 一般の方 | ・引き続き10年以上本邦に在留していること |
留学生として入国し、学業終了後に就職している方等 | ・引き続き10年以上本邦に在留していること。
・ただしこの期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格に変更許可後引き続き5年以上の在留歴があること。 |
|
特例が適用される(要件が緩和されます) | 日本人・永住者・特別永住者の養子(特別養子を除く) | ・引き続き10年以上本邦に在留していること |
日本人の配偶者 | ・実態を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。 | |
永住者の配偶者 | ||
特別永住者の配偶者 | ||
日本人・永住者または特別永住者の実子または特別養子 |
・引き続き1年以上本邦に在留していること |
|
構造改革特区特定事業者等で我が国への貢献があると認められる方 |
・引き続き3年以上本邦に在留していること |
|
地域再生計画区域内の公私の機関(特定活動告示第36号または第37号)の活動により我が国への貢献があると認められる方 | ||
「高度専門職省令」に規定するポイント制で70点以上の点数を有している方 | 次のいずれかに該当
・「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること ・3年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。 |
|
「高度専門職省令」に規定するポイント制で80点以上の点数を有している方 | 次のいずれかに該当
・「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること ・1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。 |
|
「定住者」の在留資格を有する方 | 「定住者」付与後引き続き5年以上本邦に在留していること | |
インドシナ定住難民の方 | ||
外交・社会・経済・文化等の分野において我が国への貢献があると認められる方、「『我が国への貢献』に関するガイドライン」に該当する方 |
・引き続き5年以上本邦に在留していること |
|
難民の認定を受けている方 | ||
特別高度人材の基準を定める省令に規定する基準に該当する者 | 次のいずれかに該当
・「特別高度人材」として1年以上継続して本邦に在留していること ・1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として特別高度人材省令に規定する基準に該当することが認められること |
※「特別高度人材」が永住者への変更申請をする際の特例は、令和5年12月1日改訂の「永住許
可」に関するガイドラインで追記された部分です。
在留資格「永住者」 申請にあたっての注意点
永住者ビザの取得について、注意すべき点がいくつかあります。下記の点です。
1.「永住者」ビザの申請ができる外国人とは
2.「永住者」ビザへ申請できるのはいつからか
3.申請者の在留資格により申請書が異なる
1.「永住者」ビザの申請ができる外国人とは
「永住者」ビザを申請できるのは、日本で既に在留資格を持って在留する外国人で「在留資格の変更」を希望する者、または、出生等により永住者の在留資格の取得を希望する外国人です。
つまり、永住ビザには呼び寄せで行う「認定証明書」の制度がありません。
2.「永住者」ビザへ申請できるのはいつからか
通常、在留資格更新許可申請は在留期限の3か月前から行えますが、永住ビザについては在留期限の満了する日以前であればいつでも申請できます。
ただし、永住許可の要件を満たしていると判断できなければ、申請が無駄になってしまうので、当然その判断後となります。
また、永住許可の申請中に在留期間が経過する場合は、在留期間の満了する日までに別途 “在留期間更新許可申請” を行わなければなりません。
永住申請の場合は、特例期間の制度もありません。
出生により永住者の資格の取得を希望する場合は、出生その他の事由発生後30日以内に手続きが必要となります。
3.申請者の在留資格により申請書が異なります
在留資格「永住者」を申請する場合、申請人の方の在留資格や身分・地位によって申請書・必要書類が異なります。下記のように、4つの場合があります。
1.申請人の方が、日本人の配偶者、永住者配偶者、特別永住者の配偶者又はその実子である
場合
2.申請人の方が、「定住者」の在留資格である場合
3.申請人の方が、就労関係の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「技能」など)及
び家族滞在」の在留資格である場合
4.申請人の方が、「高度人材外国人」であるとして永住許可申請を行う場合
まとめ
在留資格「永住者」の申請については、許可を受けるための要件が多いため、まず自分が要件を満たしているかどうか、確認が必要です。完全に満たしていると確信できれば別ですが、通常は確信できない場合がほとんどです。まずは専門家に相談し、どの部分が要件に満たないか、どうすれば要件を満たして申請することができるのか、確認することをお勧めいたします。